カードキーをぶら下げているOLさんについて

僕の会社の取引先であるA社は、フロアごとにロックがかけられていて、そのロックを外すにはカードキーをかざさなくてはならない。うちの会社のカギなんか未だにシリンダー錠だし、カードキーも何もワンフロアしかない弱小企業なので、いつもA社に来るたびに圧倒される。僕と上司はいつも受付で来客用のカードキーを渡されるのだが、それを首にかけるとそのときだけはA社の一員になれているような気がして、何だかいい気分だ。

そんなA社に来るときの楽しみが、女性社員たちを観察することだ。僕の会社の女性社員は平均年齢が不惑を超えていて、一番最年少でも33歳既婚女性である。今の時代、こんなことを口に出せばすぐに男女雇用機会均等法があーだのセクハラがどーだのと言われてしまうので、絶対に誰にも言えない。だけどA社の女性社員は若い女の子が多く、ただそれだけでテンションが上がる。とりあえず受付の女の子にはLINEのIDを教えてもらっていて、今度コンパをする約束は取り付けてある。でもできたらもっと社内の奥の方、できれば社長秘書なんかとお知り合いになることが僕の目標だ。仕事しろ?もちろんやるべきことはやっているつもりだ。

取引先はいくつもあるし、もっと大きな会社に出入りすることだってあるのにどうしてA社の女性社員にこだわるのだろうと自分なりに考えてみた。他の会社とA社との違い、それはみんなカードキーを首からぶら下げているということだ。何故だろう、アレをぶら下げているかいないかで、どういうわけか女性の魅力が2割ほど増すような気がするのだ。下手なアクセサリーなんかよりずっとその人を際立たせる。何か守るものを常に身につけているっていうのが、なんていうか男の狩猟本能をくすぐるのかもしれない。

今日も直行でA社に行く予定だ。いつもより香水の量を少しだけ増やし、僕は狩り…じゃなかった、仕事に行くのだ。